川久保剛2012『福田恆存』(ミネルヴァ日本評伝選)ミネルヴァ書房

 共産党シンパだった知識人たちがレッドパージ後、手のひらを変えて"騙された!"と被害者面するその態度を、言論活動を戦前から牽引してきた福田も林達夫も冷ややかにみる。やや丁寧な福田の所感に対し、林のそれはより率直である。


(「新しき幕明き」『群像』昭和二五年八月号)
戦後五年にしてようやく我々の政治の化けの皮もはげかかって来たようであるが、例によってそれが正体をあらわしてからやっと幻滅に感じそれに食ってかかり始めた人々のあることは滑稽である。人のよい知識人が、五年前、「だまされていた」と大声で告白し、こんどこそは「だまされない」と健気な覚悟のほどを公衆の面前に示しているのを見かけたが、そういう口の下から又ぞろどうしても「だまされている」としか思えない軽挙妄動をぬけぬけとやっていたのだから、唖然として物を言う気にもなれない。
(前掲書pp.128 ll.5-10)
ハンタイの、ハンタ〜イというあれである。