盤外に出る藤山一雄。

 一方、「争いごとが嫌い」(星野直樹の述懐による)な藤山一雄は、自身の博物館プランをこれを取り巻く環境ごと具体的なイメージに彫琢してプレゼンする。世界観を開陳して誘おうという、権力ゲーム=駆け引きをいみじくも排し得た態度。イメージ指向なので、本書にいう<低級なる原始人><高級なる現代人>の相克といった枝葉末節の議論や、要不要の官僚じみた機能主義に二者択一に陥ることが図らずもなかったのである。これが同じ総合的な博物館モデルを設計した棚橋源太郎と異なる方向性をたどったのはこうした事情があったことが本書で辿られている。