今野裕一ほか2001『ペヨトル興亡史―ボクが出版をやめたわけ』冬弓舎

 ペヨトル工房を率いてきた今野は、その19年の活動の休止を宣言するイベントの2カ月間の感慨のなか、以下のことを述べている。


 本の買われ方が変わったのも如実に体験した。イベントが続いた二カ月のあいだ、自分の作った本とお客さんの関係を見ていると、いろいろなことが分かったきた。極端な言い方だが、今の読者は自分のことにしか興味がない。だからバックナンバーが単品単位で平均的に売れる。自分の興味のある本だけを買って帰る。隣にある同じ程度にマニアックな他ジャンルの本には目もくれない。そんな感じだ。ペヨトル工房のように手広くかつ深く出している出版物は、全点書店に置いてもらわないと売れなくなっていたのだ。以前なら一冊買ってもらえば、それを頼りに他の本もどんどん買ってくれたように思う。
(pp.144-145 ll.17-18, ll.1-6)

 本書の中で、休止・解散に至った理由を自問自答するなか、読者に向けられたくだりはこの部分しかpoliには拾い出せなかった。それだけ今野以下、ペヨトル工房の面々のテクストに読者への感謝にあふれている、ということなのだが。

 享受者の関心の変異を認知した、と捉えるとpoliには上の述懐が興味深い。彼らは、かつては自分たちとともに、ヘンな色を重ね塗りしてエヘエヘ惑溺していたのが、単色と化していく、という読者の関心集合の変容をみた。(集約とか誤用していた。集約農業をマイナスイメージに捉えていたばっかりに。アホだった、、)