木村衡「地方史資料の保存活用と文化財保護〜遺跡の問題を例に〜」『古代民衆寺院史への視点』岩田書院

 このテキストの底本はこれ
 もともと、文化財保護ということに関して真剣に考えようにも、poliには危機意識がなかった。確かになぜ遺跡を守るのかといえば、こちらの興味本位に帰着せざるをえない。原因者の私有財産を制限してまで行政が調査を指導することに根拠があるのかさえ知らなかった。しかもそれが法的根拠として弱いものだということも。そんなpoliには想像もつかない、とある行政では上の著述に示されたような主張を叩きつけられていたのである。


「上行寺東遺跡では、遺跡の保存運動の過程で、学者やボランティアが「自主発掘」と称して遺跡の発掘調査を行ったと聞いている。開発業者は常に莫大な調査費用の負担と、長期にわたる遺跡調査期間により、多大な被害を受けているが、こうしたボランティアによる発掘ができるのであれば、そのような形で調整してほしい。また、調査については大量の人員を導入して短期に終えてほしい。」(pp.139)
 私は、このテクストとともに著者本人からは直接、「なんで遺跡を調査してるの?なんで守らなくてはいけないの?」と折から問われていた。発掘のバイトから会社員になって自前で税金を払うようになってからもこの問いを中心とした語らいは、彼が亡くなるまで続いた。わたしは連名でこの問題についてのテクストを記す過程で、自ら努める畑に近いところで似たような位置づけで模索していることに気づいた。