『金融工学者フィッシャー・ブラック』日経BP
フィッシャー・ブラックについては先に示した今野浩の『金融工学の挑戦』中公新書にも記されていた。また金融工学の例の諸公式をめぐる立役者達は全般的に『マネー革命〈第2巻〉金融工学の旗手たち』NHK出版に記されている。
しかし本書は、上の2著や、先に示した『金融工学20年』と違う視点が注入されている。私は、やや前に『マクロ経済学はどこまで進んだか』(東洋経済新報社)を読む機会があった。ビジネスサイクル理論なんてものがあるということをここで知ったような、その程度のど素人なわけであるが、フィッシャー・ブラックは、サミュエルソンがスタグフレーションに翻弄される豪雨のなか、例の3者の思潮を品定めを決め込み、その一方で、自らの一般均衡観の定立を画策していた!!!というのが、本書第8章である。ここだけでも読み応え十分(昼休みボケ〜〜〜〜〜)。個人的には、先の『どこまで』を補うかのような本書なわけだ。アカデミズムから下野した理由が、自らの理論の定立にあったというのが、なんとも刺激的で、ケインズと同じく、市場を公共の最たるものをイメージしていたという論調はなかなかそそるものがある。