瀬川拓郎『アイヌ・エコシステムの考古学』北海道出版企画センター

 過日の書籍にて紹介した、2箇所の〝財産目録〟から浮かび上がったタテ関係/ヨコ関係とは、別個のタテ関係/ヨコ関係が本書で紹介されている。
 和人の強いる「階層化」, 「統合」=タテ関係が、アイヌの「ゆるやかな連帯」に浸食する、その過程。これがモノ(=出土品)に反映している、と著者はいう。


この異文化の論理と価値観の浸食とは、狩猟採集社会の「ヨコの原理」で被い包まれた「贈物」としてのモノではなく、「タテの原理」に生起する剥き出しのモノとしての「商品」が直接流入してくることだ。
(本書p.12 ll.12-14, 太字協調は引用者)
 この「商品」というのは、この引用部分についている註にある通り、資本論マルクスがのべているところのもので、確かに商品=外的な関係性のモノというその定義に上で説明する状況は合致する。
 翻って、律令によって「階層化」という制度が内部化した後の現象として現れているのが、タテ関係の裡でのモノの往還をみたのが、甲野のそれであり、これはマルクス述べるころの「商品」ではないのはもちろんである。
 で、縄文時代、ましてや後期旧石器時代となってくると、我々の眼前に現れる当時のモノは、「商品」ではなく、マルクスがその「文化・価値体系の「差異」」を「商品」に込めてその関係を構成していく流れを絵解きした、生産表式(ちなみに個人的にはスラッファなんてぇのはいかがかとマニアかよ!!)というのがあるのだが、さしずめそれを形造る〝因子〟(鉄だの、小麦だの)ということになろうか。ま、何もマルクスに拘泥する必要はないのだが。